キミ想い


雪の結晶を見るには条件があると、以前何かのテレビで見た。

低い気温と高めの湿度、穏やかな風。

これからの条件が揃ってようやく綺麗な結晶が見れるらしい。

私たちが住むこの街では、気温がマイナスになることがあまりないから、見れることはほぼないだろう。


「知ってるか? 雪の結晶は、同じ形のものがないって」

「そうなんだ。なのに、溶けてなくなっちゃうなんてもったいないね」


言いながら、手のひらに雪を乗せるも、私の体温ですぐに溶けて水に変わる。


世界にふたつとない雪の結晶。

少し……恋に似てるな、なんて考える。


蓮を想う私の恋の結晶は、どんな形をしているのか。


ふと、隣に座る蓮を見ると、彼は舞い落ちる雪を眺めながら……


「お返しだけどな」


と、唇を動かした。


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