キミ想い


放課後、私は最悪な気持ちで蓮の部活が終わるのを待って部室棟へと向かっていた。

部室棟の前には秋明アリーナと呼ばれる建物。

中には男バスの為のバスケットボール専用コートがあり、ミーティングルームやトレーニングルームも完備されている。

秋明高校はバスケの名門校。

毎年インターハイに出場している為、待遇が非常にいいのだ。

私はアリーナを眺めながら蓮が出てくるのを待った。


開いた扉から見えるのは下級生だろうか。

コート内で片付けをしている姿が視界に入る。

一年の頃、蓮や桃原もあんな風に片付けしてたのかな、なんて考えた。

右京は入学早々特別扱いされていたのは知ってるけど。

……そういえば、久しぶりにここに来たかも。

右京の事があってからずっと避けてた場所だったから──


「……なずな?」


その声に、私の肩が震える。

だってこの声は……


「なんだか久し振りな気がするな」

「……右京」


あんなに涙して恋していた相手だったから。


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