キミ想い
「ああ、遅くまで誰もいないから色々と楽しめるぞ」
吐息がかかる。
蓮の纏う雰囲気が甘さを含んでて……
「蓮……ちょっと近いよ」
と言いながらも、いちゃつきたい自分がいるのも否定できない。
「どうする? 寄るか?」
囁くような甘い声に私が頷こうとした刹那──
「ウォッホン!」
「わっ!?」
わざとらしい咳ばらいが私たちの空気をぶち壊した。
私は急いで蓮との距離を元のものに戻す。
「そーゆーのは人がいないとこでやってくんねーかなー」
私が振り向いて声の主の姿を認めたのと同時に、蓮の声が話し掛けた。
「ハル、気ぃきかせろ」
「ヘイヘイ。じゃあな~」
呆れたといった様子で私たちの横を通り過ぎようとする桃原。
と、昼間の恨みを思い出す。