キミ想い
チャイムが鳴る。
立ち上がる。
桃原と一緒にダッシュして、下駄箱が見える階段下にこっそり隠れる。
待機する。
収穫なしで教室に戻る。
四時限目までそれを繰り返していた私と桃原は現在、昼休みという長い時間を階段下の片隅に座っていた。
桃原が口内に放り込んだ飴の香りが私の鼻をくすぐる。
「……それ何味?」
「これはイチゴちゃん」
どうりで甘くてそそられる香りなはずだ。
「美味しそうな匂いだよね」
下駄箱に視線を向けながらなんとなく零した言葉。
「食う?」
問われて「食べたい」と答えると、今まで下駄箱を見つめていた桃原の視線が私に向いて。
「食ってるやつを口移しな」
からかうようにニッと笑った桃原の背中を私はバシッと叩いた。