キミ想い
「いって!」
声を潜めて痛がる桃原を私は睨んでやる。
「冗談だって。佐伯の女にんな事するか」
「蓮の友達ならそんな冗談言わないでよ」
言い返すと、桃原がピタッと動きを止めた。
「……そうだよな。何でだ?」
「いや、こっちが聞きたいわよ」
そんな会話でふと知らない事がある事に気付く。
「桃原って彼女は?」
「いるぜー」
そうか……いるんだ。
知らなかった。
そういえば、蓮から聞いたこともなかったなぁ。
「いいの? 私なんかにかまってて。彼女とお昼一緒に食べたりとか……」
「しねーよ今さら。つーか、今冷却期間ってやつだし」
それはつまり、うまくいっていないという事だろうか。
わざとそんな風にして恋を盛り上げてるとは思い難いし。