キミ想い


「離してよっ」


少し高めの声に困惑と焦りを混ぜて逃げようとしている子。

確か……夏目(ナツメ)さんだ。

同じクラスにもなった事もまともに話した事もない子だけど、顔と名前くらいは一致する。

この子に、私は何かしてしまったの?


「何でんな事してんだよ」


桃原が厳しい顔つきで問えば、夏目さんは怒ったように言い放つ。


「わ、私は頼まれただけよ!」

「誰に」

「…………」


黙ってしまった夏目さんを見て、桃原がニヤリと笑った。


「……なーんて、大体想像つくけど」


得意げに言うから、私は驚いて口にする。


「え? そうなの?」

「確かお前、野宮(ノミヤ)とは親友だよな?」

「っ!」


桃原が名前を口にした途端、明らかに動揺する夏目さん。


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