キミ想い
STORY19 【いっそ夢であれば】
犯人が野宮さんだとわかってから一週間も過ぎない頃だった。
休み時間に野宮さんが突然教室に入って来て、私の前に立つと口に含んでいたチュッパチャップスを引き抜いて話す。
「片桐さんに聞きたい事があるの。放課後になったら女子剣道部の部室に来てくれる?」
「剣道部? どうして──」
「つべこべ言わずに来ればいいのよ」
いきなりの低く強い口調に私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
そんな私の態度に気を良くしたのか、野宮さんが微笑む。
「そしたら終わりにしてあげるから」
終わりにするという事は、ちゃんと話し合いで解決するつもりでいてくれてるんだ。
……良かった!
私が確かに頷いて見せると、野宮さんは満足した様子でまたチュッパチャップスを口に入れる。
「それじゃあまたね」
「うん」
何を言われるかはわからない。
だけどいい方向へと向かえばいいなと願いながら、私は放課後を待った。