キミ想い
「用事?」
終礼後、私を迎えに来た蓮が眉を寄せた。
試合間近の調整で部活が休みになったらしく、デートでもしようと誘ってくれたのだけど……
残念過ぎるほどにタイミングが悪かった。
私はこれから野宮さんと話に行かなければならないのだ。
野宮さんと話すだなんて言いにくいし、私は友達と約束がある事にした。
「友達とお茶して帰ろうって話になってて」
「友達、な……」
……そう来ると思った。
いつもの私ならちゃんと名前を言うから怪しんでるんだろう。
だけど蓮はそれ以上は追求せずに、まだ教室にいた桃原に視線を投げた。
「ハル、お前は帰るのか?」
「自主練するぜ~。朝練ん時ちょっと不調だったし」
「ああ、そういや言ってたな。仕方ない、一人で寂しく帰宅するか」
「ごめんね蓮」
両手を合わせて謝罪すると、やっと蓮は口元に笑みを浮かべてくれる。