キミ想い


ゆっくりと開いた扉の向こうは、何の変哲もない部室。

両壁側にロッカーがあり、中央にはベンチがあった。

そこに、野宮さんが一人で座っていて、ウェーブがかったボブカットの髪を手櫛で整えながら私を見て微笑んだ。


「いらっしゃい」

「あの……どうも」

「来てくれて良かったー。ありがと」


ニコニコと微笑んでいる野宮さんに私も微笑みを返す。


「うん。それであの……」

「ああ、わかってるって。ちゃんと終わらせてあげるからさ」


野宮さんが言葉にした直後。

部屋の隅に隠れていたのか、数人の女子生徒が現れて私を囲んだ。


「な、何っ?」


ドクンドクンと心臓が一気に騒ぎ出して。

頭の中で警笛が鳴る。


逃 げ な い と ダ メ 。


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