キミ想い
別れたくなんかない。
だけど……
これ以上、桃原を巻き込んでしまうわけにはいかない。
私は震える唇を動かして、野宮さんに告げた。
「……わかった」
野宮さんがニヤリと笑う。
反対に桃原は泣きそうな顔で私を見た。
「片桐、お前……」
「桃原にまで迷惑かけたくないから、いいの」
今できる精一杯の微笑みを桃原に向けると、彼は怒ったような泣きたそうな表情を浮かべて。
「くそっ!」
心底悔しそうに一度だけ、床を殴った。
「ありがと。あ、そうだ。蓮以外の誰かにチクッた場合も……わかってるよね? ふふ、それじゃあね」
機嫌良さそうな声色で、野宮さんは別れを告げると去って行った。
残された私と桃原は、無言のまましばらく部室に座っていたのだった──‥