キミ想い
STORY20 【散りゆく幸福】
人気のない裏門の前。
空が淡く夕焼けのオレンジを放ち始めた頃、私は唇を噛んでから携帯を手にした。
耳にあてがうと聞こえてくる無機質なコール音がやけに怖くて。
『もしもし』
いつもと変わらない調子の蓮の声が切なく感じる。
私は泣かないようにと大きく息を吸ってから……
「……蓮」
大好きな人の名前を呼んだ。
多分もう
呼ぶことのない名を。
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STORY20 【散りゆく幸福】