キミ想い


「別れよう」


恋を終わらせてしまう、悲しい呪文を紡ぐと。


『……冗談にしてはタチが悪いだろ』


怒ったような声色で蓮が言った。

怒ってくれた事が嬉しくて。

心の中で別れたくないと何度も呟いた。


「ごめんね、急に。だけど色々あって、もう無理なんだ」

『色々ってなんだ。説明してくれ』

「…………」

『だんまりか』

「別れるんだし、知る必要ないでしょう?」


電話で正解だった。

こんな涙でぐしゃぐしゃの顔じゃ、説得力ゼロだ。


『……俺は納得いかない。なずなと別れるなんて、考えてもいない』


彼の想いに嗚咽を漏らさないように口元を手で抑えた。

だけど、いつまでも蓮を騙せるわけもなく。


『お前……何があった?』

「っ…! 何も? とにかく、用件は済んだから切るね」


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