キミ想い


夕暮れ。

カラオケルームを出た私と桃原は駅への道を辿っていた。

足元には長く伸びる二人の影。

私はそれに視線を落としながら声にする。


「前にさ、元気のなかった私を蓮が遊びに誘ってくれたんだ」

「へぇー」

「で、私がカラオケに行きたいって言って一緒に行ってね。いっぱい歌って……気付いたら、嫌な事なんて忘れてた自分がいたんだ」


本当に、魔法がかかったみたいだった。

蓮という存在がどれだけ凄かったか。

今思えばあの時にはもう私にとって蓮は特別だったのかもしれない。


いい友達だと思ってたのに、いつの間にか特別な人になってた。


「……なぁ、それって俺に喧嘩売ってる?」

「えっ!? なんでそうなるの!?」


いきなり言われて驚いて桃原を見れば、彼はジトッと私を睨んでいた。


「だってさ、佐伯の話してるって事は、俺とのカラオケじゃ嫌な事忘れてねーんだろ?」


うわっ、拗ねてる。


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