キミ想い
「こんなトコで何してんだ」
「うち、この近所だから」
「ああ、そーいや雪平からそんな話し聞いた事あったか」
佐伯の口から右京の名前。
しかも右京が私の話をしてくれていたらしい言い方。
たったそれだけの事なのに、嬉しくなってしまう自分がいて。
私は持ち上がって来る気持ちを感じながら佐伯に話しかけた。
「佐伯はここで何してんの? 家近いっけ?」
「いや、ダチの家に遊びに行く途中」
佐伯のダチというと、どうしてか女じゃないかと思ってしまう私。
「……今、どうせ女の家だろ、とか思ったな?」
佐伯はジトッと私を見つめ、探るように顔を近づけて来る。
「思いました」
佐伯は些細な変化に気づけるような人だ。
誤魔化しは無用なので、素直に肯定した。
すると、佐伯は一瞬驚いた表情を見せたかと思うと、すぐにクックと喉を鳴らして笑いだす。