キミ想い
STORY25 【いつかの香り】
「予選もうすぐだよね?」
「んー…来週だな」
「いいの? デートなんて……」
「俺が会いたいから誘ったんだし気にすんなって」
日曜日の午後。
快晴……とはいえないくもり空の下で、私は隣りを歩く桃原とそんな会話をしていた。
桃原と付き合い始めてからもうひと月が過ぎた。
「さーて、どこ行く? そーいや映画見たいって言ってたよな?」
「うん。だけどファンタジーだよ? 桃原ってそっち系興味あったっけ?」
「なくても片桐が好きなら俺も見る。楽しいモン、好きなモンは共有しよーぜ」
ニカッと笑った桃原。
彼は宣言した通り、私に対して無理強いはしないでいてくれている。
友達の時のままの距離を保ったままの恋人。
最初はその事に対して桃原に感謝していたけど……
最近は、これではダメなんじゃと思う自分がいる。
隣を歩く桃原の手に、目が行って。
繋ぐべきか、迷う。