キミ想い


何ていうか……桃原のこういう所が好きだなぁ。

手を引いてくれる事も、反応も。


「んで、とりあえずチケット買うか?」

「そうだね。時間に余裕があるならどこかでお茶でもする?」

「リョーカイ。んじゃさっそ…く……」


桃原の声がまるで雑踏にのまれるように途切れる。


「桃原?」


ピタリと立ち止まってしまった桃原の様子を伺うと、彼は真っ直ぐ前を見ていた。

その眼光は真剣さを帯びていて……


何があるのかと桃原の視線を追った私は……桃原と同じように、動きを止めてしまった。


だって、私たちの前にあった……ううん、いたのは。


「……よぉ、佐伯。偶然」

「……ああ」


蓮だったのだから。



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