キミ想い
「……うん。じゃあ見に行く」
答えると桃原は少し驚いたように目を丸くしてから明るい笑顔を浮かべた。
「おう! んじゃ、帰りはそのままデートしよーぜ」
「うん」
頷くと桃原は機嫌良さげに鞄を手にして教室を出て行く。
そんな桃原の姿が微笑ましくて、私は小さく笑いながら彼を見送った。
バスケ部か……
蓮と別れてからまったく行ってなかった場所。
今日行くことで私の心は少しでも軽くなるのかな。
「なるといいな……」
自分でも気付かないうちに声にして。
大きく深呼吸すると、私は秋明アリーナへと向かった。
その途中。
部室棟の裏手、人気のあまりない場所から女子の声が耳に届く。
普通の会話のようなものだったら気にも止めなかっただろう。
けれど、聞こえてきた声は刺を持つような声色だった。
自然と視線がそちらへと向かう。