キミ想い
視界に入ってきた光景は、芝生の上に立つ二人の女生徒。
背中を向けている子は誰だかはわからない。
でも……
私から見える、もう一人の、縮こまって怯えている子は。
「……夏目さん」
野宮さんの親友。
私の下駄箱に手紙を置いていた、夏目さんだった。
彼女は俯いて、体を固くしている。
「ねえ、だんまりとかウザイんだけど。とりあえずさ、野宮といるからってチョーシに乗ってんなよ?」
「調子に乗ってなんか……」
「うっわ口答え? 生意気になったねアンタ」
イラついた声を出しながら、夏目さんの髪の毛をわし掴んだ。
それを見た瞬間、野宮さんに騙された時の記憶がオーバーラップする。
恐怖が蘇り、私の手がカタカタと小さく震えて。
今すぐにこの場所から立ち去りたい衝動に駆られたけど……
夏目さんがぎゅっと瞼を閉じた姿に、別の衝動が生まれた。