キミ想い


あの時、私が願ったもの。


"助けて"


その気持ちを、夏目さんの姿から感じた気がして。


「やめてあげて」


私は、勇気を振り絞り、夏目さんと女生徒の間に割って入った。


「な、なにっ、急に」


夏目さんに意地悪をしているのは、同じ学年の子だった。

話したことはないけど、顔は見たことある。


「こういうの、やられる側の心には凄い傷になって残るんだよ。理由はよく知らないけど、乱暴はしないで」

「め、めんどくさー。庇うとかバカみたい」


彼女は僅かに目を泳がせて言うと、興ざめしたように背を向けて去っていった。


「はぁ~……よかった……」


肩の力を抜いて思わず安堵の息を吐く。

もしかしたら、私も乱暴なことされるかもと一瞬考えたけど、そうならなくて良かった。

まだ少し震える手をそっと合わせると、背後から夏目さんの小さな声が聞こえる。


「こ、こんなことしたら、片桐さんもいじめられちゃうじゃん」


泣きそうな声に振り返れば、夏目さんは不安そうな顔で私を見つめていた。


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