キミ想い
「あー……うん、そうかもね。でも、助けたかったから」
余計なお世話だったらごめんね、と続けると、夏目さんは俯いてから……
「なっちゃんと、同じこと言うんだ……」
ボソリと声を零した。
「え?」
「……なんでもない。あの……ありがとう」
ペコリと頭を下げてから、夏目さんは校舎へと走り出した。
ありがとうの言葉が心に響く。
夏目さんは、本当はとてもいい人なのかもしれない。
ただ、野宮さんという友人の為に動いていただけで。
ふと、強い風が吹けば、雲が流れ太陽を隠して。
空を仰げば、雲の切れ間からさす薄明光線。
天使の階段とも呼ばれる降り注ぐ光の美しさは、私の口元を優しく緩ませて。
アリーナへと再び足を進める私の手にあった震えは、夏目さんの言葉のおかげか、天使の階段のおかげか、いつの間にか止まっていた。