キミ想い
「右京君に許可もらったから見学席で見てていいよ」
かりんに笑顔で言われた私は、お言葉に甘えて、少し高い位置にある見学席からコートを眺めている。
今日は個の力強化のために1on1(ワン・オン・ワン)の練習に重点をおくらしい。
「次、桃原! 葦屋(アシヤ)!」
右京に促されてハーフコートのセンターに立つ桃原と葦屋。
葦屋は、私たちと同じ学年でちょっと好戦的な性格を持っている。
いつだったか、右京は彼を「他者へのライバル意識が高すぎて、時々トラブルを起こしそうになる」と評価していたっけ。
葦屋の血気盛んな瞳の先には桃原。
「ハルさ、なんか今日は張り切ってね?」
「ま、ちょっとな」
リストバンドの位置を直しながら桃原は葦屋に答え、開始を待っている。
私は、コートの端に立ちプレーを眺める蓮をチラリと見た。
ここに到着してすぐに蓮の姿を見つけた私は、なるべく彼を見ないようにしていた。
そのせいもあって蓮が私の姿を認識しているかはわからない。
でもまあ、私から蓮の姿がよく見えるくらいだから、気付いているのかもしれないけど……
そんな風に考えていたら、ふと、桃原が私の方を見てピースサインをした。
すると、葦屋の視線までも私へと向けられる。