キミ想い
「あー……そういうこと。てか、そうなるとやっぱ噂はマジなんだ?」
……噂?
私が首を傾げると、右京がオフェンスである葦屋にボールをパスして1on1がスタートした。
にらみ合う両者。
桃原が唇を開く。
「噂ってなんだよ」
すると、葦屋はニヤリと意地悪そうに口元を歪ませ……
「佐伯の浮気が原因でハルに乗り換えたってやつだよ!」
眉を潜めて驚く私をよそに、葦屋は楽しそうにボールを付き、足を踏み出した。
もしかしたら、これは葦屋なりの心理戦なのかもしれない。
そんな噂は本当はなくて、桃原に動揺させる為の虚言。
だとしたらそれは成功だ。
桃原は固まったまま動かず、葦屋はその脇を難なく抜けてゴールにボールを叩きつけた。
桃原は悔しがりもせず、ただ、葦屋を睨んでいる。
蓮も、腕を組んで壁に寄りかかりながら葦屋をいつもより鋭い視線で見ていた。