キミ想い
そして、翌日の昼休み。
私は桃原を教室のある階の非常階段へとメールで呼び出した。
屋上で話す事も考えたんだけど、今日の素晴らしい快晴じゃ人が多そうだったのであえて非常階段に。
ちなみに今現在まで桃原からの返信はないまま。
扉を開いて外に出ると、昼の暖かな空気がやんわりと私を迎え入れた。
穏やかな風が、緊張している気持ちを落ち着かせてくれるようだ。
手摺りに手を添えてそこから広がる景色に視線を向ける。
決して褒められた景色が広がっているわけじゃないけど、生い茂った緑の葉が風に揺れるのを見るのは嫌いじゃない。
深呼吸をし、歯の擦れる音を聞いていると。
キィッ──
背後の扉が、来訪者がある事を告げた。
振り返ればそこには待ち人。
良かった。来てくれた。
桃原は扉を閉めると、私と向き合った状態で立つ。
けれど視線はいつもみたいに私に向いてはいなかった。
彼が見つめる先は、特別何があるわけでもない壁や足元で。