キミ想い


「急にごめんね」


私は静かに声を発した。

気まずい空気は私のせい。

不安がって黙ったままじゃダメだから、私はとにかくまずは謝ろうと思って頭を下げて。


「ごめんっ」

「ごめんなっ」


……謝った声に、私じゃない別の声が同じタイミングで謝ったように聞こえて頭を上げた。

見れば、桃原も同じように頭を下げていて。


「え……あの……」


戸惑って声を掛けると、桃原はゆっくりと頭を上げてバツが悪そうに頭をかきながら言った。


「空気読むとか言っといて、勝手すぎたっつーか……」


言いたい事が纏まっていないのか、言葉を探すように桃原の声が小さくなる。


「私が悪かったし、そんな……」

「いやいやいや、佐伯の事わかってて付き合ったんだし」

「ううん、それでもやっぱり私も悪いから」


謝り合って、その状況に二人して小さく笑い合う。

ふわりと背中から通り抜けて行く風が、背中を押してくれるように感じて、私は一呼吸のあと桃原に告げた。

正直な嘘偽りない気持ちを。


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