キミ想い


複雑な感情を抱えながら私は笑みを浮かべて見せる。


「うん、一緒に帰ろうって約束してるんだ」

「そうか。俺もここで待ち合わせ」


……相手は、かりんの言っていた彼女だろうか。

思ったら知らぬ間に声になっていた。


「彼女?」


その問いに蓮は私から視線を外し、校舎の方を見ながら「ああ」とだけ答える。

チクリ。

感じた痛みを誤魔化すように何か話題を振ろうとした時だった。


「蓮―っ! お待たせっ」


明るい女の子の声がして、私は自然と声の方を見やる。


視界に入り込んだ瞬間──


その姿に心臓が強く反応して、遅れて吐き気が訪れた。

恐怖と悲しみが私の全てを支配していた時間がフラッシュバックする。


「彼女って……」


野宮さん、なの?


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