キミ想い


「……どうした?」


うずくまりたくなっていた私の耳に届いた声は、蓮でも野宮さんのものでもなく、ハルのものだった。

ハルは私を背に庇うように立つ。

安堵感と共にハル越しに蓮を見れば、今度はハルをジッと見つめていた。

けれどそれも束の間。

蓮はハルにも私にも何も言わずに、野宮さんに「行くぞ」と声を掛けて歩き出す。

足音が遠ざかって聞こえなくなった頃、ハルがこっちを振り返った。


「もしかして佐伯の彼女ってアイツ?」

「そう、みたい」


答えた私の手をハルがギュッと握ってくれる。

伝わってくる温かさに少しだけ救われた私は、ハルに今できる限りの笑みを向けたのだった。


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