キミ想い
STORY30 【逃げて、募る】
放課後、ハルと一緒に帰る約束もしてなかったけど、家に帰る気にもなれなくて、私は図書室に入り浸っていた。
なんとなく気になった星座の本はまだ3ページほどしか読み進めていない。
どうしても、昨日の蓮の言葉が私の頭の中に甦り、何度も再生されるからだ。
『俺が好きなのは今もなずな……お前だけだ』
あの時、確かにそう言われて、それから……蓮の温かい手が、私の頬に触れた。
トクントクン。
脈が早くなると湧きあがったのは蓮への愛情。
必死に心の奥に押し込めてあった蓮を想う恋の結晶は、いとも簡単に輝きを取り戻してしまった。
蓮の体温をもっと感じたくて、その胸に飛び込みたくて。
だけど、野宮さんとの約束と、ハルの存在がその行為を思いとどまらせた。
「わ…たしは……もう、ハルと付き合ってるし……」
「……わかってる。でもな……このままでいるつもりはない」
そっと蓮の手が私の頬から離れて、代わりに私の肩をポンポンと叩いた。
蓮の表情は普段の彼のものだったけど、どこかスッキリとした感じがして。
「このままでって……?」
「まあ、色々な」
──結局、その色々が何なのかはわからないまま、蓮は私に背を向け屋上を去ってしまった。