キミ想い


教室には誰もいない。

シンと静まり返った室内に、蓮が自分の席の椅子をひく音が響いた。


「隣りに座ってくれるか」

「うん……」


一体何を手伝わされるのか。

不思議に思ったのも束の間、私の脳裏に野宮さんの姿が浮かんだ。

こんなとこ見られたら危険だ。

恐怖心に座りかけた腰を再び上げる。

すると、蓮が「どうした?」と訝しげに私を見た。


「えっと……野宮さんが見たら良く思わないだろうからやっぱり──」

「心配無用。あいつは今日、美容室に行ってる」

「そ、そうなんだ……」


ホッとするも、もしかしたら蓮に会いに来るかもしれないという不安が生まれる。

それが伝わったのか、蓮は再び言葉を発した。


「そのあと家の予定があるらしいからここには戻らない。安心しろ」


その言葉で私はやっと安堵する。

蓮の隣りに座ると、私は彼を見た。


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