キミ想い
「お礼はもういいよ。それより、私がかばって余計なことになってたりしない?」
問いかけると、夏目さんは首を横に振った。
「大丈夫」
「そっか。ちょっと心配だったんだ」
ホッと肩を下ろす。
すると、夏目さんは唇を動かした。
「……昔は、毎日あの子にいじめられてたんだけどね、高校に入ってからはなかったんだ。なっちゃんのおかげで」
「なっちゃん?」
私が首を傾げると、夏目さんは少し黙って言いづらそうな素振りを見せて……
「……野宮、なつき」
野宮さんの名前を出した。
私の心臓がキュッと拒否反応を示し締め付けられる。
堪えるように制服の胸元を掴むと、夏目さんは瞳を伏せた。
「ごめんなさい。私、断れなかった。私にとって、なっちゃんは大切な友達だから……」
友達の頼みだから、断れない。
けれど罪悪感に押しつぶされそうなんだと言うように、彼女は唇を噛み締めた。