キミ想い
太陽が高い位置に昇りきった頃、合宿所に設置されたコートに右京の凛とした声が響き渡る。
「よし、そろそろ休憩にしよう。昼食後、またここに集合するように。解散!」
部員が散り散りにコートをあとにし、私は深く息を吐いた。
……やっと休憩だ。
昼食のお弁当は午前中に業者さんから受け取ってあるので、あとは各自で昼食をとるのみ。
なので、私とかりんもここの片付けが終わったらすぐに食事をとれるようになっている。
合宿のスケジュールは昨日とほぼ同じ流れ。
細かいメニューは違っていても、私の手伝う内容に大きな変化はない。
時間の速度だって変わらないはずなのに、どうして気持ちひとつでこうも一日が長いのか。
再びため息を吐き出すと、隣で片付けをしているかりんが私の様子を見て眉をハの字にした。
「なずな、顔色悪いけど具合悪い?」
心配そうに私の顔を覗き込むかりん。
「寝不足なだけ。大丈夫」
苦笑いを浮かべ答えると、かりんは「眠れなかったの?」とさらに心配そうな表情を濃くした。
「うん。枕が違うからかも」
家に帰ったらたっぷり眠るから平気だと告げれば、かりんの表情が少しだけ和らいで。
「昼食の片付けは私だけで大丈夫だから、なずなは少し多めに休憩してていいよ」
そう言ってかりんは優しく可憐な微笑みを私に向ける。
「でも……」
悪いよと続けるつもりの私の声はかりんの「いいから、ね?」という気遣う声と笑みに阻まれて。
申し訳ないなと思いつつも、かりんの優しさに甘えて首を縦に振ったのだった。