キミ想い


コート内にホイッスルの音が響き、午後の練習が始まった。

私はというと、30分ほど眠れたからか、午前中よりも体は楽に感じられてテキパキと動けるようになっていた。

ボトルにドリンクを補充し、タオルを回収し洗濯機をまわす。

昨日と同じように手伝いを続け、午後の休憩時間に突入した。


「かりん、これってもう倉庫に持って行っていいのかな?」

「うん。大丈夫? 私が持っていこうか」

「平気。行ってくるね」


私は使い終わったラガーを抱えるとコートを出て倉庫へと移動した。

大きな引き戸の扉を開けて薄暗い倉庫の中へと入る。

中は様々な部活の用具が置いてあり、私はバスケ部の用具が置いてある棚の前に立った。

ラガーと書かれた大きめの箱は棚の一番上。

手を伸ばしてみると、ギリギリ届きそうな高さで。


「これなら……取れそう、かも」


左手で棚に寄りかかり、右手を伸ばしながらつま先で立った。

建て付けが悪いのか、棚がカクンと小さく動く。

危ないな、と思ったと同時。


「……なずな?」


よく知った声に呼ばれて、私はその体勢のまま入口へと目をやる。

するとそこには、日の光を浴びたジャージ姿の蓮が立っていた。


< 293 / 404 >

この作品をシェア

pagetop