キミ想い
STORY35 【身勝手な痛み】
白い壁、無機質な天井。
クリーム色のカーテンで遮られたスペースの中に、彼は眠っている。
昼間の事故からまだ意識は回復してない状態だった。
今も彼……蓮が眠っているのは、どうやら点滴から流れる麻酔が原因らしい。
蓮以外に患者さんのいない大部屋で、私は眠る彼の傍らでただ座って様子を見ていた。
本来、ここに眠っているのは私だった。
だけど、蓮に助けられてその立場は逆になった。
もしかしたら打ちどころが悪ければ……ここでこうして息をしている事はなかったのかもしれない。
そんな風に考えたら、心臓が握りつぶされるかと思うくらいにギュッと傷んだ。
あの時、私があの場にいなければ蓮はこんな事にならなかったのに。
どうしては私は蓮を傷つける事しか出来ないんだろう……
と、静かな病室内に廊下を歩く誰かの足音が聞こえてくる。
それは病室の前で止まると、代わりに私の名前を呼んだ。