キミ想い
「何で、佐伯と一緒にいたんだよ」
聞かれると、思ってた。
きっとハルは疑ってるって、病室に入ってきた彼の表情を見た時になんとなく感じ取ったから。
「偶然だよ。私はラガーをしまいに行ってて、蓮はストップウォッチが欲しいからって……」
「……つか、お前さ、佐伯の事名前で呼ぶのやめたんだろ? なんで呼んでんの?」
「あ……い、今のは無意識っていうか癖が残ってて」
「癖が残ってて? 未練残ってての間違いだろ」
ハルの言葉が、鋭く胸に突き刺さる。
未練が残っていないとは言えない。
それは自分でよくわかってる。
でも、それをなくせるようになりたいって、ハルの隣で心からハルを想えるようにいつかなりたいって、思ってきたのに。
「未練残っててっ、俺に隠れてこっそり会ってたんだろ!?」
彼の怒りが、私の想いを声にする気力を奪っていく。
ダメだ……
今ハルは私の言葉を信じてはくれないだろう。
どんな言葉を並べたって、彼は疑いという黒い心に覆われてしまっているだろうから。
だったら私は……
「どうすればいいの……?」
「……は?」
「本当の事を言っても信じてもらえないなら、何を言えばハルは納得するのっ?」