キミ想い
ドキン、心臓が反応して、それが私の言葉に違和感を持たせてしまう。
「あ……えっと……先、帰るって……」
けれど右京は気にした様子もなく微笑んだ。
「そう。今、佐伯のお母さんが戻って来たよ。入院の手続きするからってまた出て行っちゃったけど」
「そっか」
「佐伯、部や試合の事はまた近いうちに考えよう。今はとにかく治す事に集中してくれよ」
「ああ、悪いな」
蓮が答えると右京の瞳が私を捉える。
「面会時間も過ぎるし、俺たちはそろそろ行こうか」
病室から見える景色はいつの間にか夜になっていた。
ハルと話して、戻ってくるまでにそんなに時間が経っていた気ははなかったのだけど……
思い返せば、ぼぅっとしていた時間は確かにあった。
ハルのいなくなってしまった景色を、ただ呆然と立ち尽くして見ていたんだっけ。
「うん……あの、また明日寄るね」
助けてもらったことのお礼をきちんとしたいと思って言えば、蓮は小さく笑った。
「かまわなくていい。ハルに怒られるだろ」