キミ想い
──その日の放課後。
かりんからの急なメールで呼び出された私は、かりんの指定通りにバスケ部のコートまでやって来た。
「ごめんね、いきなり」
「ううん」
「帰る前に間に合って良かったよ。これ、口に合うかわからないけど持って帰って?」
そう言ってジャージ姿のかりんから手渡されたのは、手作りシュークリームが入った箱だった。
「昨日たくさん作ったから朝、部の冷蔵庫に入れてたんだ。昼休みになずなに渡そうと思ってたんだけど、うっかり忘れてて」
私の分までちゃんと用意しててくれてたなんて、かりんってば本当にいい子だ。
「ありがと。家でお母さんと妹と堪能させてもらうね」
「なずなの家は女三人甘いの好きだもんね」
クスクスと笑ったかりんにもう一度お礼を言うと、彼女の視線が私の背後に移って。
「佐伯」
声にしたから振り向くと、思ったよりも近くに蓮が立っていた。
「あーあ、せっかくなずなを脅かしてやろうと思ったのにな」
……なるほど。
だから私はこんなに近づかれてても気配を感じなかったのね。