キミ想い


「ごめんね、せっかく全国に進めたのに……」

「試合よりお前の方が大事」


こんなやり取りは何度目だろう。

お見舞いに行った時も謝る私に蓮は私が無事である事が大事だと微笑んでくれてた。


「それに心配するな。ギブスはもうすぐ取れるし、うまくいけば決勝には出れる」


うまくいかなかったら、蓮にとって高校生活最後の舞台を私が邪魔した事になる。

俯いてしまうと、蓮は「それより」と声にした。


「ハルと喧嘩でもしたか?」


問いかける蓮の瞳には真剣さというよりも、からかいの色が浮かんでいて私はそれにまたしても苦笑いで答える。

そこで蓮の表情が真剣味を帯び、彼の唇が何かを言いかけたその時──


「……残念、タイムリミットだ」


目を伏せ口の端を上げた蓮が零すと、ちょうどそのタイミングでバスケ部員が次々と姿を現した。

外周から帰ってきたのか、息を切らす部員に混じってハルの姿もあった。


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