キミ想い
夜の街を走りながら、私はたくさんの事を考えた。
もし二人がバスケットコートにいて、私の声が届かなかった場合、勝負の結果ハルが勝ったら私はどう思うのか。
蓮が勝ったら私はどうしたいのか。
息を切らしながらぐるぐると考えて、ようやく辿りついたすずらん公園。
最後の気力を振り絞り、高架下のバスケットコートまで走り向かうと、聞こえてきたのはボールがコンクリートを打つ聞き慣れた音。
高架下のスペースに設置されたコートが見えてきて、直後、視界に飛び込んできたのは、腕を包帯で固定したままドリブルをしている私服姿の蓮だった。
蓮の前でディフェンスをしているのはもちろんハル。
彼もカジュアルな私服を身に纏っていて、どちらの表情も大会で見せるような真剣さを漂わせていた。
ハルを抜こうと動く蓮が時々辛そうに顔を歪める。
本当なら止める声を発するべきなんだろうけど……
二人の空気が、それを許してはくれなかった。
どちらが勝ってるかはわからない。
でも、余裕があるように見えるのはハルの方で……
蓮がついに片膝をついてしまった時にシュートを決めたのもハルだった。