キミ想い


──どこかの部屋で、誰かがラブソングを歌っているのが聞こえる。

その歌声は決してプロのように上手いわけではなかったけど、甘く穏やかな歌い方は、まるで今の私たちの心を表しているかのようだと……


蓮と唇を合わせながら考えていた。


「……なずな……」


蓮がキスの合間に私の名を囁くように呼ぶ。

応えるように私からも彼の唇を求めると、愛おしむように彼の唇が角度を変えまた重なった。


久しぶりの蓮とのキス。

それは、切なくて甘くて……


蓮の事を想う気持ちが溢れて、どうしようもなく泣けてきてしまう。

やっぱり私には、蓮だけなんだと思い知らされるようだった。


どのくらい唇を合わせ続けていたのか。

名残惜しそうに彼の唇が離れた時には、もう聞こえていたラブソングは可愛らしいポップスへと変わっていた。


蓮は、私をまたギュッと抱き締める。


「やっと……捕まえた」


耳元で蓮が囁いて、私は彼を強く抱き締め返すことで答えた。


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