キミ想い
でも……焦っても始まらない。
とにかく今できるのは、先日話していた夏目さんと接触すること。
データについて少しでも何か情報を得るところから始めよう。
けれど、うまくやれるか不安で、小さく溜め息を吐き出すと校内にチャイムが鳴り響く。
先生が授業の終わりを声にした直後、教室内は徐々にいつもの穏やかな空気を取り戻した。
そんな中、主不在となった私の前の席にハルがこちらを向きに跨り座る。
「今日も、いつものごとく部活あるけどなずなはどうする?」
どうする、というのは、帰りは一緒に帰るのかという質問だ。
ハルは、私が蓮に気持ちを伝えたという事を知らない。
最初は言ったほうがいいと思っていたけど、時折、ハルが私に見せる愛情の名残を感じてしまうと言いにくくなってしまって。
一緒に帰路につく度に、迷っていた。
「特に予定もないし、待ってていい?」
今日は、言えるような雰囲気になるだろうか?
ハルを傷つけてしまうかもしれないけど……
真っ直ぐに私を好きでいてくれたハルには、隠し事はしたくない。
特に、蓮の事に関する事であれば、これ以上むやみにハルの心を踏みにじりたくない。
「オッケ。じゃ、終わったらメールすんな」
「うん」
私が頷くと、彼はクラスメイトの輪の中へと入っていった。