キミ想い
夏目さんはベランダに出てくるとキョロキョロと周りを確認して「一人?」と私に聞いてくる。
「一人だよ。夏目さんは、どうしたの? 部活?」
「私は部活には入ってないから。委員会の仕事でちょっと残ってたんだ」
「そうなんだ。お疲れ様です」
と、微笑んでから野宮さんが校内にいるんじゃないかと不安になって。
今度は私がキョロキョロと辺りを見回してしまう。
すると、夏目さんが「ああ」と気づいたようで。
「なっちゃんは先に帰るって言ってたからもういないよ」
「そっか……」
なっちゃんという野宮さんのあだ名が出て胸を撫で下ろすと、夏目さんが眉根を寄せて苦笑いした。
「ごめんね」
突然謝られて、私は目を丸くする。
彼女はもう一度「ごめんなさい」と謝ると、私に向かって頭を下げた。
「夏目さん……」
夏目さんはゆっくりと頭を上げると、視線は床に落としたまま唇を動かす。
「なっちゃんの行動が行き過ぎなのはわかってたの。でも、止められなかった。なっちゃんもなっちゃんなりに佐伯君を本気で好きだったから、片桐さんにはひどい事をしているとわかってても、なっちゃんを止められずに協力してたの」
そこまで話してくれると、夏目さんの視線がやっと私を捉えた。