キミ想い


「言い訳に聞こえるかもしれないけど、なっちゃんが呼び出してした事……私は知らなかった」

「え? でも、夏目さんがハルに声をかけたんだよね」


あまり思い出したくない最悪の記憶。

そこからハルのセリフを思い出して私は首を傾げた。

夏目さんがこくりと頷く。


「うん。でも、何をするかは聞かされてなかった。ただ、なっちゃんが私に連絡したら桃原君に声をかけて片桐さんを助けるように言えって言われて……」

「そうだっんだ……」


もしかしたら、野宮さんは夏目さんに気を使ってあげてたんだろうか。

こうして接してみてわかる夏目さんの人柄は、どちらかというと優しい子だ。

野宮さんを大切に思っているのもその証拠だろう。

だから、あえて詳しく話さなかった。

そんな風に思っていたら、夏目さんがまた眉根をよせて笑む。


「でも、助けてあげて欲しいって思って言ってた。片桐さんの事も、なっちゃんの歪んだ心も」


浮かべられた笑みと言葉に、やっぱり夏目さんは優しくて温かい心を持った子だと感じた。

だから、彼女の言葉なら信用できると思った。

思ったから、聞くことにする。

蓮から任せられた件を。


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