キミ想い
STORY44 【再び立ち止まる時】
野宮さんが怒りで拳を強く握り、鋭い瞳で夏目さんを見つめて。
引き結んだ唇が形を変え、言葉を紡ぐ。
「信頼してたのに、ふざけんな」
「……なっちゃん……」
掠れた夏目さんの声。
彼女の体は、少し震えていた。
それでも、振り絞るように野宮さんへと言葉をぶつける。
「このままじゃダメだと思ったの。こんな方法じゃ佐伯君の心だって──」
「うるさい」
と、今度は野宮さんの瞳が私を捉え、片口を上げて憎々しげに笑う。
「もしかして、勝った気でいる?」
「私は勝ち負けなんて──」
「むかつく、そのいい子ぶったコメント。どうしてアンタなの。蓮は、どうしてアンタにあんなに入れ込んだわけ?」
話しながら、更に怒りを積もらせていく野宮さん。
「それ、返してよ」
差し出された手。
野宮さんの瞳は憎悪を孕ませ私を睨んでいる。