キミ想い
恐怖で心臓がドクドクと脈打つ中、私は手の中に収まっている小さなケースをギュッと握った。
唇を噛み締め、小さく首を横に振ってみせれば……
「あっそ。てことは、またひどいことされたいんだ?」
脅しを口にする。
その途端、あの日心にできた傷のかさぶたが、無理矢理はがされるような感覚に襲われた。
吐き気がこみ上げて呼吸が早くなる。
そんな私の変化に気付いた夏目さんが、懇願するように声を荒げた。
「や、やめてあげてよなっちゃんっ。そんなことしなくても、佐伯君はなっちゃんの彼氏でしょう?」
「そうだよ。だから渡さない。絶対に……」
野宮さんは俯いて低い声で零し……
ふと、ニヤリと口元に笑みを浮かべた。
そして……
「ああ、でも……どうなったって蓮はアンタよりもあたしを選ぶに決まってるんだった」
顔を上げたかと思うと、野宮さんは下腹部を撫でて。
「だって……この子のパパになるんだから」
クスクスと笑いながら、言った。