キミ想い
「せっかく来てくれたのに申し訳ないけど、何もないよ?」
だから私は、ただ微笑んでみせる。
心配する事はないと、勘違いだよと笑ってみせる。
隠していると見抜かれたとしても……
「でも、心配してくれてありがとう」
私はただ、微笑んで否定する。
バカだね、私。
こんな事を蓮に対してするのは、何度目だろう。
好きな人に隠し事ばかりして。
痛みを伴うような静かな時間が流れ、やがて、沈黙していた蓮が口を開いた。
「……そうか。なら、いい」
あっさりとした言葉。
以前のように追求されるかと思っていた私は、拍子抜けして返答もせずにただ彼を見てしまっていた。
「どうした?」
「あ……ううん」
いけない。
これ以上追求されないようにと私は話題を探す。
……あ、そうだ。
私は立ち上がり、机の上に置いてあったケースを手に取った。
夏目さんから受け取った、データの入った小さなSDカードを。