キミ想い
そう、少なくともこれでハルに迷惑をかけることはなくなった。
野宮さんが蓮を好きでいる限り今後の事はわからないけど、これでしばらくは私も脅されてる状況から脱出できたのだ。
「ハルに連絡してあげないと」
もう、大丈夫だよって。
野宮さんの脅しになんか振り回されず、のびのびとハルらしく過ごしてねって、そう伝えてあげよう。
「そういえば、なずな」
蓮はカードをケースの中に戻しながら私を見た。
「夏目がデータを持ってたのか?」
「ううん。野宮さんに任せてもらうように説得して、もらってきたみたい」
「どうしてなずなに渡した?」
「ぶつかってみるって言ってたから……もしかしたら、夏目さんは止めたいのかもしれない」
寄り添うだけじゃなく、ぶつかると決断した彼女の姿は今でも脳裏に焼き付いている。
私の言葉に、蓮は納得したように頷いた。
「そういうことか」
「え?」
「野宮といる時に夏目とも接する事があるんだが、最近は何かに迷ってるように見えた」
その時の光景を思い出してるのか、蓮はまだ手に乗せたままのケースを見つめながら話した。
夏目さんの心の迷いに気付いてたなんて、相変わらず蓮はすごいと思う。
でも、せっかく前を向いた途端に、私のせいで夏目さんはさらに悩むようになってしまっているのだと思うと胸が痛い。
その痛みが、顔に出てしまっていたのだろう。
蓮は少し心配そうに眉尻を下げて私の頭を撫でてくれた。