キミ想い


蓮は私を抱き締めたまま、何も聞かないでいた。

多分、私から話すのを待っているんだろう、と感じて。

私は、蓮の胸に顔を埋めると……

蚊の鳴くような声を紡いだ。


「……ごめんね、蓮」

「それは……絶対に話さないって事だな」


蓮の口から、静かで、感情のない声が聞こえる

怒ってるのか嘆いているのかさえ悟らせない声。

私は頷くのではなく、また「ごめん」と謝って。


「やっぱり、もう一緒にはいれない」


私たちが隣りにいられる未来はないのだと、告げた。

蓮の小さなため息が落ちる。


「またそれか」


そして、私を包んでいた腕をほどいて上半身を起こすと、右手で顔をおおった。


「……なんで……」


零れた声は、弱さを滲ませていて。

蓮はその体勢のまま、私に言葉を尽くす。


「なぁ……俺は、何があってもなずなを信じられる。野宮がどんなバカな事やってても、またお前がハメられても、俺はなずなの気持ちを疑ったりしない」

「それでも、ダメなの。一緒にいたらいけないの」


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