キミ想い


蓮の顔には冷たい怒り。

野宮さんの顔には焦り。


「何をした? 何を吹き込んだ?」

「な、にも……」


蓮から視線を反らして答えた野宮さん。

けれど、蓮はそれを許さない。


「嘘つけ。なぁ、今まで俺が何も気付いてないと思ってたのか?」


野宮さんを追い詰めるように、冷たい声で責める。

そして蓮は、ズボンのポケットから小さなSDカードを取り出して野宮さんに見せた。


「こいつでなずなを追い詰めて、うまくいったと笑ってたんだろ?」


カードを目にした途端、野宮さんの顔色が青ざめる。

このままじゃ、野宮さんはお腹の赤ちゃんの事を告げられない雰囲気だ。

ただでさえ言いにくい話題だというのに。


散々苦しめられたのは百も承知だ。

野宮さんをかばう必要だってないかもしれない。

それほど、私は辛い思いをした。

でも……


お腹の赤ちゃんに、そんな事は関係ないのだ。


そう思ったら、黙ってみていられなくて。


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