キミ想い


「他は異常なしで、明日には退院でかまわないらしい」

「そう、なんだ……」


階段から落ちて骨折だけで済んだのは、まさに不幸中の幸いだ。

最悪、そのまま死んでしまうことだってあるんだろうし……


「なずなのお母さんたちはロビーにいるけど、呼ぶか?」

「うん……でも、その前に──」

「野宮、だろ?」


私が頷くと、蓮は親指で私の背中の向こうにある壁を指した。


「野宮は隣りの病室にいる。あいつは足の方に怪我してるが、他に異常はないそうだ。お前がかばったおかげだな」

「あの……じゃあ……」


野宮さんのお腹にいる赤ちゃんの事を、蓮にどう聞いていいのか悩んで言いよどんでいたら。


「……子供はいない」

「──え?」


蓮の口から静かに言われて、私は目を丸くした。


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