キミ想い
STORY48 【感謝の言葉を】
彼女の元を訪れ、話がしたいと頼んだのは、蓮が帰ってすぐだった。
夕暮れの屋上は少し肌寒い。
彼女……野宮さんは、足の骨にヒビが入ってしまったらしく、車椅子でここまで移動した。
どう切り出したらいいかわからない。
赤ちゃんの話が嘘だった事、蓮の事。
私の想いと、野宮さんの想い。
ちゃんと話さなければいけないのに……
いざ、彼女とこんな風に時間を過ごすとなると、戸惑ってしまう。
野宮さんは車椅子に座りながら、緑色のフェンスの向こうに広がる街の景色を眺めていた。
その瞳がふと私へと向いて、ドキリとする。
「……話って、なに?」
少し不機嫌な声で問われて、私は唇を引き結んでから……
「まず……赤ちゃんの、ことなんだけど」
なるべく落ち着いた声で言った。
すると、野宮さんは「ああ、アレね」とまたもや面倒そうな声を出して。
「嘘だよ。蓮から聞いてないの?」
開き直ったように話す。