キミ想い


「なのに……アンタだけは、別だった。別れさせさえすれば、終わると思ったのに……」


そこまで話すと、彼女は黙った。

なんて声をかけたらいいかわからない。

むしろ、私には何も言われたくないかもしれないなと考えていたら、野宮さんの声が再び聞こえてきた。


「あたしは諦めないよ。あたしだって、蓮のことが好きだから。簡単に諦められるなら、あんな手まで使わない。ただ……やり方は、変える」

「……え?」


野宮さんの言葉に私は思わず目を丸くする。


「何驚いてんの。アンタが腹くくっちゃったら、汚い手を使っても意味ないでしょ。だから、あたしも真っ直ぐに、蓮にぶつかる」


野宮さんの目は、いつの間にか強さが宿っていた。

嫌味なんて一切ない、まるで夢を追いかけるような純粋な強さを持った瞳。

彼女の中で何かが変わったのか。

それともこれが本来の彼女なのか。

どちらにせよ、初めて見る野宮さんの姿にちょっとした嬉しさを覚える。

そして、ふと思い出す。

夏目さんの存在を。


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